iOS スイッチコントロール 1-2-3! (1)

解説

 以上が、スイッチコントロールの基本です。まだ細かな設定がたくさんあり、設定の組み合わせによって動作も使い勝手も大きく異なります。どの設定がベストなのかは、その人の身体の状況にもよります。慣れや体調によって使い勝手の良さも感じ方も変わります。
スイッチの導入に際しては、次の点にもご留意ください。

 
1.スイッチの種類と設定
 適したスイッチの選択は重要です。指先がわずかに動くだけの方に、ある程度の力が必要な押しボタン式のスイッチは適さないかもしれません。ピエゾスイッチや空圧スイッチは、感度の調整や設置場所の調整に気を使います。
 スープを飲む時はお箸ではなくスプーンが適していると考えます。小さなスプーンで少しずつ口に入れた方が飲みやすい人もいますし、少し冷めたスープをストローで飲むことならできる人もいます。蕎麦を食べる時はフォークでは雰囲気がでないと思うかもしれなけどお箸が持ちにくいならフォークはよいチョイスです。雰囲気を大切にして木や竹で作ったフォークなら喜ばれるかもしれません。
 スイッチも同様に、機能的な面でなく、使う人の気持ちも考えて、スイッチの選択と設定調整を行うことが大事だと考えています。

 
2.段階を経て導入
 特に画面でタップしてiPadを操作することを知っている場合は、スイッチで操作することにもどかしさを感じるかもしれません。指でタップしていた時のようにテキパキと動かせないイライラが操作間違いを引き起こして余計にイライラしてしまったらもったいないことです。
 「LINEで家族と連絡とれるようにしたい」「メールをしたい」「ワードで書きたいことがある」という要望が多くありますが、アプリの操作、文字入力とかなり難しい方の操作を、初めてスイッチを使う方がいきなり挑戦すると、やっぱりできない!と感じてしまう可能性が高くなってしまいます。
 小学校の調理実習の最初はゆで卵でした。多少の卵の大きさの違いはあってもきちんと時間を守れば調理結果はうまくできるからです。同じ卵料理でも、スクランブルエッグやオムレツだってあります。卵は火加減によって硬さも味も変わる難しいものです。いきなり高度な料理に挑戦するのではなく、目標を持って徐々に慣れてもいいと思います。
 スイッチも同様に、すべてのiPadの操作はスイッチでできるということを知った上で、まず最初は画面に表示された9枚のカードのうち1つを選んでタップすると音声で伝えるような、シンプルな使い方から始めると良いと思います。

 
3.焦らず楽観的に
 自動ハイライトで動いているカーソルを、望みの場所でスイッチを押して選択するのは意外と難しいものです。初めての人だと、縁日の射的くらい難しいです。
 「あー、惜しい」「そこじゃないって」「遅いんだってば」「もうだめねぇ」と横にいる人が思わず言ってしまうことがあります。そんなことは本人が一番よくわかっていることです。横でため息を疲れるだけで気が滅入ってしまいます。
子どもが初めて電気炊飯器でお米を炊いてくれた時に、水加減によって硬めの出来上がりだった時は「この硬さはカレーの時にはいいかもね」と言うし、軟らかめに出来た時は「塩昆布と一緒だと美味しいかもね」と言って、その良さを引き出すのが周りの一言だと思います。
 スイッチも同様に、押すタイミングが早い時には「そのタイミングが早く押す時の感じですね」と伝えて、操作感を覚えてもらえるなら、きっとすぐに自在に操れるようになると思います。練習している時は「いい感じですねぇ」「その調子!」と合いの手を上手に入れるように私たちは心がけています。

 
4.再現しやすい利用環境
 この微妙な角度であればスイッチを認識しますね、と専門家に言われても、その後そのスイッチの設定をするのは家族や支援者です。ヘルパーさんも毎日違う人がくるかもしれません。ある脳性麻痺の方が、自分の声で話しができず不随意運動があるのでiPadの画面のタップもできなかったのですが、スイッチを頭で押してiPadを操作していました。しかし新しいヘルパーさんは、そんなことができるとは思わずiPadを彼が使えるように設置しませんでした。設置してくれた他のヘルパーさんもいましたが、Bluetoothの接続がわからず結局使えないまま放置。彼はその間、自分の意思を伝えることもテレビのチャンネルを自分で変えることもできませんでした。
 誰でも再現しやすい環境を整えることが大切です。Bluetoothではなく有線の接続であったらできたかもしれませんし、彼がどのように使っているかビデオを撮っておいて初めてのヘルパーさんが見られるようにしておけば、できないという思い込みを捨てて彼に接してくれるかもしれません。
 炭火で焼いた焼鳥はとても美味しいです。炭火の準備も鶏肉を切り串に刺すのも、パーティーのためなら時間も手間もかけるのが楽しいですし、多少焦げてしまってもそれは笑いのネタになります。でも毎日の食事となれば話は別です。もちろん、本物の味を楽しんでもらうことは素晴らしいのですが、準備が大変だからたまにしか食事は作らない、というわけにはいきません。
 スイッチも同様に、使う環境を整えるのは簡単であることが大切です。たまに使うものではなく毎日使うものですし、誰が準備しても安定して操作ができる環境を用意しておくことも重要なポイントだと考えています。

 

 
スイッチを使うことは目的ではありません。
スイッチでなんでも一人でできるようになったらそれでいい、ということでもありません。
スイッチを導入する過程も大事なコミュニケーションの機会です。
是非、楽しみながら一緒に進めてください。

 
スイッチコントロールのさまざまな設定の調整や、便利な機能については、続編でご紹介します。