講演だってできますよ!

松本亜砂子さん 40代女性
中学生で交通事故に遭い、身体を動かす自由と声を失うが、心の自由は失わず、果敢に挑戦を続ける


ITヘルスケア学会 2016.5.22 東京医療保健大学国立病院機構にて

 松本さんは、中学1年生の時に交通事故に遭い、50日間の意識不明の後に目が覚めてもロックドイン(眼球運動とまばたき以外のすべての随意運動が障害されても感覚は正常で意識は清明で、単に意思表示の方法が欠如している状態)となりました。病院でのリハビリテーションは3ヶ月程度でしたが、その後自宅で家族とともに努力を続け、首から上は動かせるようになりました。現在も自分の声で話すことはできませんが、ヘッドスティック(スタイラスペンを頭を動かして使う自助具)を使ってiPadを操作しています。以前、携帯用合成音声機を使った時はその声が機械的でがっかりしていました。現在は指伝話の流暢な声を気に入っていて、会話の中で声色を変えたりして楽しんでいます。いまでは40分程度の講演もへっちゃらです。あらかじめ用意しておくので講演時間ぴったりに話すことができます。


ヘッドスティックでのiPad操作

 指伝話を使うようになって、ヘルパーさんに声をかけやすくなりました。透明文字盤だけで会話をしていた時は、相手が目の前にいないと意思を伝えることができませんでしたし、誰かが前を通り気づいてくれるまで待たなくてはなりませんでした。いまはヘルパーさんが背中を向けて作業をしている時でも、指伝話を使って声をかけることができます。

 指伝話ぽっぽも大活躍です。時計のアラームだけだと、時間が来ても何をするのか思いだせないものです。時間がきたら指伝話ぽっぽが声で「緑の目薬をお願いします」とヘルパーさんに声をかけてくれます。ヘルパーさんが帰る前にしてもらっておくことなど、忘れてはいけないことを指伝話ぽっぽに登録しておけば、自分もヘルパーさんも安心です。

やっぱり格好いいが一番です

大野京子さん 60代女性
脳出血で失語症になるも、iPhoneと指伝話で生きるちからを取り戻し、日々”進化”し続ける

 大野さんは、脳出血で倒れた後、失語症になりました。字の読み書きがまったくできなくなり、数を数えられなくなり、時計の針が右に動くのか左に動くのかもわからなくなりました。聞くことと話すことは少しだけできました。リハビリテーションの時に言語聴覚士が持っていたiPadの訓練用絵カードを見て「私もその格好いいのが使いたい」とお願いしました。

 言語聴覚士のリハビリテーションを受け、声を使って文字を入力し、入力された文字を指伝話が読み上げたのを聞いて理解するようになりました。友達にメールをすると驚いたと返事がきますが、そのメールは読めません。でも指伝話にメールをコピーして読ん内容がnでもらえば内容がわかります。そういったことを続けていくうちに、少しずつ文字も読むことができ、書くこともできるようになってきました。それは「私、iPhoneを使ってちょっと格好いいんじゃない?」って思って頑張ったからだと思います。


絵をタップすると読み上げるカードを自宅に持ち帰って復習。できると嬉しいからどんどんやっちゃいます。

 

 時計が読めないので、大事な時間は指伝話ぽっぽが声でお知らせします。言語リハビリテーションは、言語聴覚士から絵カードを自分のiPhoneのYMプレーヤーに転送してもらい復習します。絵をタップすると声で読み上げてくれるので、自分ひとりでも訓練になります。


メッセージのやりとりでは、「時計が読めない」症状は、まったく感じさせない

 

 何よりも一番嬉しいのは格好いいこと。iPhoneを使っていない友達が多いので自慢しています。字の読み書きはできなくても、話して聞くことが少しできた、その「できる力」を生かすことができたのが良かったです。
 いまでは、失語症だとわからないくらいに見えてしまいますが、それが悩みです。まだまだリハビリテーション中です。

松本さんや大野さんも使っているアプリは、こちらです


指伝話ぽっぽは、iPhone, iPadのアプリ(600円)です。時間がくると、チャイム・声・音楽でお知らせします。普通のアラームは音で知らせますが、何のアラームかわかりません。指伝話ぽっぽは、声でお知らせしますし、なによりアラーム音でびっくりすることがありません。音楽をかけることもできます。
「6時30分です。ラジオ体操の時間ですよ」と言ってから体操の曲をかけたり、いつもお薬の時間に決まった曲をかけることで思い出しやすくしたり、使い方はあなた次第です。曜日と時間の指定ができるので「今日は資源ごみの回収日です」という使い方もできます。日本語だけでなく英語も話します。アラームはたくさん設定できますから、時間を決めて作業を進める時にも便利です。



指伝話は、あらかじめ登録しておいたことばをタップして音声で伝えるアプリです。声はSho, Ryo, Sayaka, Harukaの4種類。速度と音程を変えられるので、多様な声を使えます。iOSにはテキストの読み上げ音声機能がありますが、指伝話の音声の方がより自然で流暢に表現できます。あらかじめ登録しておくと慌てずに相手に伝えることができますし、その場でタイプして話すこともできます。指伝話プラスは英語を話すJulieとPaulの他、iOSが持つ中国語やロシア語、フィンランド語など36言語を話せます。指伝話は3,600円、指伝話プラスは5,000円。指伝話はAndroid版もあり、これは外部のTTS(Text To Speech)が使えます。ちょっと試してみたい方は、指伝話ちょっと(無料)がお薦め。新しくことばを登録することはできず、広告が表示されますが、指伝話の機能をお試しいただけます。



YMプレーヤーは、指伝話メモリで作成した絵カードセットを見るためのアプリ(2,000円)です。指伝話メモリは作成編集機能があるためiPad専用ですが、YMプレーヤーは絵カードの編集をしないため、iPadだけでなくiPhoneでも使えます。指伝話メモリで言語聴覚士に作ってもらった絵カードセットを自分のiPhoneに転送してもらえば、自宅に持ち帰り、絵カードで復習をすることができます。この転送機能が大人気!言語聴覚士同士、先生同士など、作った絵カードを仲間内で簡単に共有できます。兄弟アプリのYMビューアーは無料ですが、日本語音声の再生ができない制限があります。カードの編集もできる指伝話メモリは19,800円です。


私たちが目指すこと

高橋宜盟   有限会社オフィス結アジア 代表取締役

 指伝話は当初、満員電車の中で声を出さずに電話をしたくて開発したものでした。それがたまたま喉頭癌で声を失った方に使っていただいたことをきっかけに、いまでは、失語症、構音障害、ALS、パーキンソン病の方など、さまざまな方に使っていただくようになりました。その一方で、ミュージシャン、ビジネスマン、学校や言語教室など、多様なシーンで使われています。

 「指伝話は誰を対象にしていますか?」「何ができますか?」と聞かれることがあります。いつも「使い方はあなた次第です!」と答えます。使い方を私たちが決めつけてはいけないと考えています。指伝話は生きていく上での基本であるコミュニケーションのアプリです。コミュニケーションはすべての方に関わることであり、その方法はさまざまです。だからこそ、誰もが自分の目的に合わせて自由に楽しみながら使える「アプリの余白」を大切にしています。使い方次第で、さまざまな場面で、いろいろな目的に使うことができます。人生と同じ、決めつけてはいけない。どんな展開があるかワクワクする。指伝話もそうありたいと思っています。

 指伝話は障害者や病気の方の専用製品ではありません。たまたま障害のある人も使っています。これは「たまたま障害のある人」なのか「たまたま使っている」のかどちらでしょうか。私はそのどちらでもあると考えています。今日は元気でも明日病気になるかもしれない、今夜交通事故で障害を負うかもしれない。誰も違いはないのです。そして、障害は不便なことではあるかもしれないけれど決して不幸ではない。ICTの力で不便さが解消されるなら素晴らしいことだと考えています。誰もがいまある自分の姿を普通の状態として、普通に格好良く生きられるのが理想です。

 コミュニケーションが始まれば笑顔が生まれます。これまで自分の思いを伝えられなかった人が話をすることで、これまで相手の思いを汲み取れなかった人との意思の疎通が図れるかもしれません。話しをすれば相手のことを理解したくなります。心を開き相手を知れば差別や偏見がなくなります。
 「人と人とを笑顔で結ぶ」こと、それが、指伝話の役割と考えています。

 

指伝話 Yubidenwa は、日本および他の国々で登録された有限会社オフィス結アジアの登録商標です。Apple、Appleのロゴ、iPhone、iPad は、米国および他の国々で登録されたApple Inc.の商標です。記載されたその他の製品名、及び企業名は、各社の商標です。 誌面に記載されている製品の仕様等は、予告なく変更になる場合がございます。予めご了承ください。 (YJ1606-001)