専門家に相談

 どんな種類のスイッチを身体のどの部分で使うのが良いかという点は、身体機能の評価を専門家にしていただくことをおすすめします。いま動いているところを使おうと考えますが、他の部分を使うことが回復訓練になる場合もありますし、使える場所を酷使して疲れさせてしまってはいけません。理学療法士・作業療法士・言語聴覚士などリハビリテーションの専門家に相談してください。
 また、スイッチにはさまざまな種類がありますが、置き方一つで使い勝手が大きく変わります。押しボタン式のスイッチを横向きにしたり、手に固定して持ったりしてみたら使いやすくなったという例もあります。朝と晩では体調が異なるので、使い易いスイッチや身体の場所が変わることもあります。

 

諦めない・決めつけない

 スイッチを押すなんて無理だ、できっこない、と諦めたり決めつけたりしないでください。
 交通事故による頚椎損傷で身体が動かせず声もだせず、目だけが動かせる方がいました。目の動きも制限があって視線入力装置を使うことは難しかったのですが、黒目の動きを検知するスイッチを使うことができ、iTunesで好きな音楽をかけたり指伝話メモリを使って作業療法士さんと会話をしたりしています。
 生まれた時からの病気で、右手の人差指が2mm程度だけ動くお子さんがいました。2mmの動きはスイッチ信号を受け取るには十分です。その動きでiPadが使えるとわかってきたら、親指も動き、左手の指も動きました。からだが動かないと思い込んで決めつけていたのは周りでした。人間の可能性は、私たちの想像以上に大きいものです。

 

失敗してもため息をつかない

 新しいことを始めた時のことを思い出してください。誰だって最初からうまくできるものではありません。慣れるまでは間違えたり失敗したりします。そんな時に「あぁ、だめだ」「そうじゃないのに」と横で言われると心が折れます。
 これからスイッチを使って、広がる世界に飛び出そうとわくわくしている時ですから、「お、いい感じですね」「上手になってきた」「いいねぇ」とさりげなく応援してください。操作に一度慣れてしまえば、使う力が自然にどんどん伸びていきます。

 

目的を見失わない

 スイッチを使えばすべてが解決するという魔法の杖ではありません。スイッチはあくまでも道具です。
 「お父さんにiPadを使わせたい」「この子にスイッチを使わせたい」というご家族の要望をよく聞きます。でも、本当の目的はスイッチを操作することではありません。スイッチを操作して何をしたいのか?それを見失わないようにしてください。
 何をしたいの?と本人に聞いてみると、「夫がベッドサイドでうたた寝してしまった時にエアコンをつけて寒くないようにしてあげたい」「仲間と連絡をとって頑張っている姿を見せたい」という答えが返ってきます。そして「ありがとうと言いたい」という答えが最も多く聞かれます。

 

コミュニケーション機器はきっかけです

 会話をiPadにすべて置き換えてしまうわけではありません。どんなに機械が便利になっても、人と人との関わりが消えることはありません。コミュニケーションは心とことばのキャッチボール。機械に頼りすぎず、便利に使って、コミュニケーションの機会を増やしてください。

 

考えることはたくさん

 スイッチを使って思いを伝えるために、準備すべきことはたくさんあります。技術的なことはできるだけシンプルにして、スイッチの選択とコンテンツの準備に力をかけるのが良いと思います。
 お使いになる方にとっては、できるだけ体力の消耗を避けてここぞという大切な時のためにエネルギーを温存できるように、定型的な操作は簡単に済ませられるようにすることをお勧めします。毎回文字盤で「あ・り・が・と・う」と選択するのではなく、「ありがとう」の絵カードを選択する方法があります。五十音文字盤を使うことではなく、思いを伝えることが目的です。
 さらに言えば、ことばを伝えるだけがコミュニケーションではありません。大切な人が近くにきてくれたら素敵な音楽を流そう、照明を明るくしよう、カーテンを開けよう、そういった行動で気持ちを伝えることもあると思います。昔の写真を一緒に眺める、いまの姿を一緒に写真に撮る、これもコミュニケーションだと私たちは考えています。